センター数学で注意すべきポイントとは?

学習法

今更なぜ「センター数学の注意すべきポイント」なのか?

巷にあふれている「 注意すべきポイント 」には触れられていないことがある

学校・塾・予備校講師がセンター数学について語るとき、よく出てくる「センター数学の注意すべきポイント」は次のようなものです。

・問題量に対して解答時間が少ない(分量の多寡)

・教科書範囲から出題だからと言って、問題のレベルが低いわけではない(問題の難易度)

・出題者の誘導にうまく乗りながら解答する練習が必要(出題形式)

まとめると「分量の多寡」「 問題の難易度 」「出題形式」の3点について語られることが多いわけです。もちろんこの着眼点は至極まっとうなものであり、筆者もセンター数学受験者にセンター数学の話をするときに用いる視点です。しかし、これだけでは不十分なのではないかと漠然と感じておりました。なぜかというと、普段から同じテーマの問題を何度も練習しその際は正答できているにも関わらず、模試や過去問を解かせると正答率や得点が安定しない場合があるからです。受験生に聞くと「計算ミスをして時間が足りなくなってしまった」や「問題文を読み間違えた」などの「ヒューマンエラー」に関する回答をしてきます。確かにその場合もあるとは思いますが、実際に解いているところを見ると、そればかりではないと感じます。それが何かというと「問題で聞かれていることが理解できなかった」「問題で聞かれてることを理解するのに時間がかかった」というものです。この回答が出てくるのは、そもそも問題の難易度が高い場合が多いのですが、センター数学ではこのような場合だけでなく実は思った以上に頻繁に起こっているのではないかと考えます。この点については後述いたします。

データを用いた分析に欠ける部分がある

例えば、「センター数学は解答時間に対して問題量が多いため、時間が足りない」と言われていますが、これはちゃんとしたアンケートに基づく見解なのでしょうか?この部分をしっかりと明記した受験サイトは思ったよりも少ないものです。筆者の調べになりますが、 日本数学教育学会 が毎年センター数学を受験した受験生にアンケートを取っており、平成30年の結果によると数IAに関しては解答時間が「十分足りたorちょうど良い」と「足りない」がおよそ半々(9:11)であり、一方、数学IIBに関しては約80%の回答が「足りない」だったようです。ということは、センター数学の試験時間60分を一概に「足りない」としてしまうのは些か乱暴ではないでしょうか。数学IAに関して言えば、練習するにつれて試験時間はさほど問題にならなくなってくるので、それ以外のところに目を向けて対策を講じる必要があります。しかし数学IIBであれば練習に練習を重ねて本番に挑んだとしても8割の生徒が「時間が足りない」となれば、表層的な理由だけではなくもっと根深い理由が潜んでいるはずだと考えます。

出題形式だけではなく「何を問われているのか」にもっと目を向けよ

センター数学では普段の問い方と違う場合がある。

前置きが長くなってしまいましたが、今回話したい「センター数学の注意すべきポイント」はズバリ「何を問われているのか」を瞬時に判断する力を養う必要があることです。具体例を挙げましょう。次の問題は2018年度のセンター数学IA第1問[3]の問題の抜粋です。

内容としては2次関数という単元からの出題であり、出題内容も2次関数の最小値に関するものでした。数学の指導者からすれば、比較的易しい内容だと感じます。なぜなら、 センター数学受験者であれば、2次関数の最小値に関する問題は何度も何度も練習しているためです。しかし、「2020 センター試験過去問集 数学IA IIB(東進ブックス)」のデータによると、空欄[ス]と[セ]の正答率がそれぞれ73.9%と62.5%であり、最後の\(a\)の値に関してはそれぞれ45.8%と40.6%でした。普段数学を指導している者からすると低いなという印象です。ちなみに2016年度のセンター数学IAでも2次関数の最小値に関する問題が出されています。問題は次のようになります。

\(a\) の値の範囲によって場合分けを行い、それぞれの最小値を求める問題が(1)で出題されていますが、こちらの正答率は[ウ][エ]のところが83.9%、[オ][カ]のところが75.5%でした。この程度の正答率が期待されるところですが、2018年度はそうではありません。一般的に文字定数を含む2次関数の最小値の問題では、文字定数の値の範囲によって場合分けして最小値を求めます(”場合分け”→”最小になるときの\(x\)の値を確認”→”最小値を求める”のプロセス)しかし、2018年度の出題では最小になるときの\(x\) の値を問題文から読み取り、そこから文字定数の値の範囲がどのような場合なのかを答えなければ行けないという、普段と逆のプロセスを辿らなければいけなかったわけです。

出題形式も大事だが….

このデータから読み取れることとしては、普段と問われ方が違うと正答率が落ちるということです。このような問題が普段使用している問題集や参考書にないわけではありませんが、どちらかというと少数派です。ちなみに2015年度のセンター数学IAで2018年度と同様な問い方をしている設問(2次関数の内容)がありましたが、その際も正答率は低いものでした。指導者からすれば、文字定数を含む2次関数の最小値を求める典型的な問題であり、その解法が身についていれば解答できたはずと考えがちですが、受験生にとっては必ずしもそうではないようです。例え解法が身についたとしても、出題者が解法のどの部分について問うているのかを判断し、それに対して答えれられるように練習しておかなければ、正答できないような問題がセンター試験では出題されるということです。したがって、単に出題形式(穴埋め形式)に合わせた練習を機械的に行うだけではなく「何を問われているのか」という視点を持って取り組んでいくことが大切です(特にセンター数学の得点率が80%未満の生徒)そのためにこそ、センターの過去問を使った演習が必要です。よく、センターの過去問を直前期まで手を付けない生徒がいますが、少なくとも数学に関しては夏休みや夏休み明けの9月頃から手を付けていってください。その際、出題形式になれるということだけでなく、どのような問われ方をして何を問われているのかということを意識した上で弱点補強をすると良いでしょう。

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