今回は河合出版の『やさしい理系数学』を紹介です。本書のタイトルとは裏腹に内容は決してやさしくないことで有名です。大学入試のやや難レベル以上の問題となると、なかなか解けないという人にとっての次の一冊になり得る書籍なので、今回はこの本についてお話します。
この本の対象となる人
- 最難関大学・学部受験を見据えた学習(数学)をしたい理系受験生
- 入試のやや難レベル以上の問題になると解けなくなる方
となります。この本に取り組むにあたっては数学IA・IIB・IIIの内容を一通り学習しており、典型的な問題の解法についてはマスターしておいて欲しいところです。先取り学習をしたい人向けではなく、典型問題レベルの解法は知っているが入試やや難レベルになると解けない(方針が立てられない)方向けです。扱っている問題も大学入試のやや難レベル以上の問題がほとんどなので、注意しましょう。河合塾の偏差値で言えば65前後~の方が対象でしょうか。もちろん、これに達していない方でも意欲的な人でも取り組めるかと思います。
どんな本なの?
入試のやや難レベル以上の問題が中心
本の構成としては例題が50題あり演習問題が150問収録されています。一つ一つの例題と演習問題に丁寧な解答が付けられており、別解も豊富です。特に最難関大学・学部受験で数学を使うのであれば、これらの例題・演習問題に時間をかけてるのも良いかと思います。
別解も豊富に載っている
本書では多角的なアプローチが出来るようになるための別解が豊富に掲載されております。ですので、最初に書かれている解法がしっくりこない場合は別解にも目を通して、自分にしっくりくる解法を先に身に付けておくという姿勢を取るのも良いでしょう。
どちらかというとアウトプット型
本書では入試やや難レベルの問題が中心であり、どれもじっくりと取り組んで欲しい問題です。5~10分程度で解答・解説を読むのではなく、入試の実践を意識して20~30分程度は自分なりに考えてから、解答・解説を読んで欲しいと思います。なお、本書の解答のページでは様々な視点で解答が載せられているので、どういった視点で問題を解き進めているのか確認しながら読んで行きましょう。最終的には自分で再現できるまで繰り返し解くことをおススメします。
また、出来る限り別解の理解にも時間を割いて欲しいところです。別解が何故大切なのかというと、いろいろなアプローチ方法を経験することで、試験会場での行き詰まりの打開力養成につながるからです。ですので、別解の学習に対して消極的だった方はこれを機に是非とも取り組んで欲しいと思います。
個人的におススメな使い方
分からないなりに考えてじっくり取り組む
本書レベルの問題が最難関大・学部受験では実力差が現れる問題の一つかと思います。そういった問題を解けるようになるには、典型問題の処理だけでは足りません。自分なりに手を動かしながら演習問題を20~30分程度で取り組んで見てください。その中でアプローチの仕方を考えてみましょう。最初のうちは全然解法が浮かばないこともあるかと思いますが、その際は例題の解答をじっくり読み、内容理解に時間をかけた上で次の演習問題に進んでいきましょう。その繰り返しをすることで徐々に解法や方針が立つようになってきます。
解けそうな問題、興味がある問題から手を付けてみる
どうしても最初から順々に解きたくなってしまいますが、本書は一つ一つの章が独立しているのでその必要はありません。大事なのは出来るだけ多くのテーマに取り組みそこからちょっとでも色々なアプローチの仕方を吸収することです。そうする中で、取り組み始めたことは方針も立たなかったような問題も、とりあえず一つぐらいは方針が立つようになってきます。この差は非常に大きいと思います。
章を決めて取り組む
本書は
- 第1章・・・・数と式、論証
- 第2章・・・・関数と方程式・不等式
- 第3章・・・・平面・空間図形
- 第4章・・・・図形と方程式
- 第5章・・・・三角・指数・対数関数
- 第6章・・・・微分法
- 第7章・・・・積分法
- 第8章・・・・数列
- 第9章・・・・ベクトル
- 第10章・・・・場合の数と確率
- 第11章・・・・複素数平面
- 第12章・・・・式と曲線
- 第13章・・・・関数と数列の極限
- 第14章・・・・微分法とその応用
- 第15章・・・・積分法とその応用
の15章構成になっています。目次のページに問題のテーマ(単元)が書いてありますので興味のある問題から始めるのも良いと思います。その際、完璧主義はあまりおススメしません。7~8割程度できるようにしたら次の章に進むようにして、早めに15章すべての問題に手を付けるようにする方が良いでしょう。まずは全体の概観を掴んでおき、2周目3週目と繰り返し解くという段階に移るようにしてください。
入試まで時間がないという人は本書に取り組まない
「やさしい理系数学」をレビューしているサイトを見ていると「時間がない人は例題だけを取り組むとよい」との趣旨の内容が掲載されているものを見かけます。しかし、筆者の考えとしては、そもそも入試までに時間がないという人は本書に取り組まない方が良いと思います。元々本書は大学入試数学の計算力・論証力・発想力・数学的センスを磨くための問題が収録されています。ですので、当然通常の学習よりも時間がかかります。本書はじっくり自分で考え理解することで力が付くように設計された問題集ですので、じっくり時間をかけられない方は本書に取り組まない方が良いと思います。入試までに1~2ヶ月しか時間がないという状態であれば、他の参考書をあたった方が良いですし、むしろそれまでに取り組んでいた参考書・問題集を再度繰り返し解いて解答スピードや正確性を高めるのに時間を使った方が良いでしょう。
以上のことを踏まえてこの本に興味を持たれた方はぜひ一度本書を手に取ってみてください。
今回紹介した本はやさしい理系数学 三訂版 (河合塾シリーズ)
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